ボタン電池の誤飲は、食道の腐食や穿孔を引き起こす可能性のある、分単位の緊急事態です。嘔吐を誘発させたり、食べ物を与えたりせず、直ちに動物病院へ連れていくことが原則です。

| 項目 | リチウムコイン電池(CR2032など) | アルカリボタン電池(LR44など) | 円筒形AA/AAA |
|---|---|---|---|
| 電圧 | 3V | 1.5V | 1.5V |
| 食道損傷の速度 | 15分以内に組織壊死の可能性 | 接触時に腐食性の損傷 | 比較的遅い |
| 穿孔の危険 | 非常に高い | 高い | 中程度 |
| 緊急度 | 食道に詰まった場合はすぐに除去 | すぐに | すぐに |
すべての電池の誤飲は緊急です。自己判断は禁物です。

絶対にやってはいけない行動
自宅で過酸化水素や塩水などで無理やり嘔吐を誘発させることは、絶対に禁止です。電池が食道を逆流することで追加の火傷を引き起こし、さらに吸入性肺炎のリスクも高まります。一方、「水を飲ませると電流が活性化してより危険になる」という俗説は事実と異なります。教科書では、蜂蜜やスクラルフェート(最も理想的)、あるいは水でうがいをすることで、むしろ損傷の進行速度を遅らせることができると説明しています。そのため、意識がはっきりしている場合は、病院への移動中に少量の蜂蜜を与えることが役立つ可能性がありますが、何よりも「移動を遅延させないこと」が最も重要です。指で口内をほじくることは、電池がさらに深く押し込まれる可能性があるため危険です。今すべきことは一つ、電池の規格(可能であれば包装や同一製品)を確認した後、すぐに24時間対応の病院へ向かうことです。

猫の場合は特に注意が必要です。
猫もボタン電池の誤飲事故から安全ではありません。普段から紐やゴム、小さな物を口に入れて遊ぶ癖があるため、床に落ちた電池で遊んでいるうちに誤飲してしまうことがあります。電池の露出はリモコンや電子おもちゃを通じて起こることが多く、食卓や化粧台、テレビのリモコン裏面、電子体重計の下に落ちた電池を見逃すケースが大半です。特にリモコンの電池交換時は包装をすぐに捨て、使用済みの電池は両面をテープで覆って密封してから分別廃棄し、電池が入ったおもちゃは手の届かない場所に置く習慣が必要です。


タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
シェア
[1] Tanaka J, Yamashita M, Kajigaya H. Esophageal electrochemical burns due to button type lithium batteries in dogs. Vet Hum Toxicol, 1998;40(4):193–196.
[2] Varga A, Kovács T, Saxena A. Analysis of complications after button battery ingestion in children. Pediatr Emerg Care, 2018;34(6):443–446.
[3] Blackwell's Five-Minute Veterinary Consult Clinical Companion, Small Animal Toxicology, 3rd Edition — Home Care and Recreational Products