緊急麻酔は、時間的余裕がない中で行われる高リスクの麻酔です。事前評価、薬物の選択、モニタリング基準を保護者の立場で整理しました。

| 項目 | 通常麻酔 | 緊急麻酔 |
|---|---|---|
| 絶食時間 | 8~12時間を確保 | ほぼ確保できない |
| 事前検査 | 血液検査・画像・心臓評価 | 最小限の血液検査・迅速な画像 |
| 安定化 | 数日~数時間 | 数十分以内 |
| ASA等級 | 主に1~2等級 | 主に3~5等級 |
| 死亡リスク | ベースラインのリスクが比較的低い | ASA等級が高いほど急増(猫のASA 3以上で約4.8倍) |
リスク度は、猫のASA 3等級以上で麻酔後72時間以内の死亡リスクが約4.83倍というメタ分析(Portier and Ida 2018)に基づいています。

緊急麻酔の前に飼い主様が必ず知っておいてほしい説明
獣医師から緊急麻酔の同意書が渡された際、焦って署名せず、以下の内容を必ず確認してください。 1. 現在のASAグレードと予想されるリスク度 2. 麻酔をせずに待機した場合のリスクと、今すぐ麻酔を行う場合のリスクの比較 3. 事前検査の範囲(時間的な理由で省略された項目があるか) 4. 輸血・輸液・人工呼吸の準備状況 5. 麻酔からの覚醒不全の可能性に関する率直な説明 説明を省略する病院であれば、他の緊急対応施設を探すことも検討してください。

高リスク群:このような場合、リスクがさらに高まります
緊急麻酔の前に、以下の要因がある場合は必ず獣医師にお知らせください。 - 高齢: 猫は年齢を重ねるにつれて心筋の収縮力が低下し、自律神経の調節も変化するため、麻酔中の低血圧のリスクが高まります。 - 2kg以下の超小型: 体温低下や薬物の過剰投与のリスクがあります。 - 短頭種(ブルドッグ、ペキニーズ、ペルシャ): 気道の確保が困難です。 - 心臓病・腎臓病の既往歴 - 最近の嘔吐・食事履歴: 誤嚥性肺炎のリスクがあります。 - コリー系品種: 薬物感受性遺伝子(MDR1)の変異がある可能性があります。 保護者の皆様から事前にこれらの情報をいただければ、獣医師が薬物の選択を変更することができます。


タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
シェア
[1] Pypendop BH, Ilkiw JE. Drugs and Techniques in Feline Anesthesia. The Cat: Clinical Medicine and Management, 2nd Edition
[2] Brodbelt D. Perioperative mortality in small animal anaesthesia. Vet J. 2009;182:152-161
[3] Brodbelt DC, Blissitt KJ, Hammond RA, et al. The risk of death: The confidential enquiry into perioperative small animal fatalities
[4] Ovbey DH, Wilson DV, Bednarski RM, et al. Prevalence and risk factors for canine post-anesthetic aspiration pneumonia (1999-2009). Vet Anaesth Analg. 2014;41(2):127-36