犬の皮膚腫瘍は良性と悪性に分類され、大きさ・成長速度・触れた感触などである程度推測することができます。主な種類と、病院を受診すべきサインをまとめてご紹介します。

| 項目 | 良性腫瘍 | 悪性腫瘍 |
|---|---|---|
| 成長速度 | 数か月〜数年かけてゆっくり | 数週間〜数か月で急速に |
| 境界 | 明瞭でよく分離している | 周囲との境界がぼやけている |
| 可動性 | 触れるとよく動く | 硬く固定されている |
| 表面 | おおむね滑らかで均一 | でこぼこしていたり、ただれたりすることもある |
| 痛み | ほとんど無痛 | 触れると痛がることもある |
| 転移 | なし | リンパ節・他の臓器への転移の可能性 |
表の特徴はあくまで一般的な傾向です。潰瘍(ただれ)は良性・悪性のどちらの腫瘍でも現れることがあり、単独では良性・悪性を区別する基準にはなりません。特に肥満細胞腫は良性のように見えても悪性のことがあるため、見た目に関係なく細胞吸引検査(FNA)や組織検査で確定診断する必要があります。

このような兆候が見られた場合は、すぐに動物病院へお越しください。
以下のいずれかに該当する場合は、24時間以内に受診してください。皮膚腫瘍は、早期発見と早期切除が予後を最も大きく左右します。 - 急速な成長:2~4週間で目立って大きくなる場合。 - 固定性:触ると周囲の組織にしっかりと固定されており、動かにくい場合。 - 潰瘍・出血:表面がただれたり、血や滲出液が出たりする場合。 - 変色:黒ずんだ赤色や紫色に変色する場合。 - 多発性:似たようなしこりが複数同時にできる場合。 - リンパ節腫脹:しこりの近くのリンパ節も同時に腫れている場合。


品種別の注意点 — 腫瘍の好発犬種
ボクサー、ラブラドール・リトリーバー、ゴールデン・リトリーバーは、マスト細胞腫などの悪性皮膚腫瘍にかかりやすい犬種として知られています。バーニーズ・マウンテン・ドッグやロットワイラーなど、一部の犬種でも腫瘍のリスクが高いと報告されています。コッカー・スパニエルやプードルは、皮脂腺腫瘍(皮脂腺腫)がよく発生する犬種です。ただし、犬種ごとの好発傾向は地域や集団によって異なる可能性があるため、参考程度にご覧いただくようお願いいたします。高齢犬(平均8歳前後以上)では、すべての犬種で皮膚腫瘍のリスクが高まります。好発犬種の場合は、年に1〜2回の定期検診と併せて、毎月皮膚を触って確認する習慣をつけるのが安全です。去勢・避妊の有無や肥満などの要因も、一部の腫瘍(例:脂肪腫)のリスクに影響を与える可能性があります。

タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
シェア
[1] Raskin RE, Meyer DJ. Small Animal Cytologic Diagnosis: Canine and Feline Disease, 2nd Edition. Saunders, 2016. Chapter: Cytology of Skin and Subcutaneous Tissue
[2] Jackson HA, Marsella R. BSAVA Manual of Canine and Feline Dermatology, 4th Edition. BSAVA, 2021. Chapter 34: Cutaneous Neoplasia
[3] Withrow SJ, Vail DM, Page RL. Small Animal Clinical Oncology, 6th Edition. Saunders, 2019