犬の甲状腺機能低下症について、定義や原因、主な症状、診断方法、そして生涯にわたるケアまで、飼い主さんが知っておくべき重要な情報をまとめました。


| 項目 | 単純な老化 | 甲状腺機能低下症 |
|---|---|---|
| 体重の変化 | 筋肉が減り徐々に減少するか維持されます | 食事量は変わらないのに徐々に増えます |
| 被毛の状態 | 全体的に薄くなる | 左右対称に抜け、刈った後に生えにくい |
| 活動性 | 加齢とともに徐々に低下 | 全般的に無気力になり疲れやすい |
| 皮膚 | 乾燥 | 黒い色素沈着・フケ |
| 寒さへの反応 | 普通 | ひときわ寒がる |
甲状腺機能低下症は症状が潜行性に徐々に現れるため、老化と誤解しやすいです。複数の項目が同時に当てはまる場合は、病院で甲状腺ホルモン検査を受けるとよいでしょう

特にこれらの品種には注意が必要です
ゴールデンレトリバー、ドーベルマンピンシャー、アイリッシュセッター、ボクサー、グレートデーン、ダックスフンドなどの中型~大型の純血種犬は、甲状腺機能低下症を発症しやすいことが知られています。発症は通常中年期、特に3~6歳の間で始まるため、この時期からは健康診断の際に甲状腺ホルモン検査も併せて受けることをお勧めします。また、甲状腺機能低下が長期間放置されたり重症化したりすると、気力が急激に低下し、低体温や徐脈が顕著になる「甲状腺機能低下症危機(Hypothyroid Crisis)」という緊急状態に進行する可能性があります。必ずしも昏睡状態になるわけではありませんが、症状が急激に悪化した場合は直ちに動物病院へ行き、速やかな獣医師の診察を受ける必要があります。

治療を開始する際に知っておいていただきたいこと
レボチロキシンは過剰投与の場合、甲状腺機能亢進症に似た症状(不安、多飲、多尿、体重減少など)が現れる可能性があります。ただし、犬では甲状腺ホルモンが速やかに代謝・排泄される特性上、こうした症状が現れることは比較的稀です。用量調整が完了していない初期段階でこのような兆候が見られた場合、自己判断で投与を中止せず、必ず病院に相談して減量するかどうかを判断してもらう必要があります。逆に、症状が残っているからといって薬を追加で与えることも厳禁です。

タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
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[1] Ettinger SJ, Feldman EC. Textbook of Veterinary Internal Medicine, 8th Edition, Chapter Hypothyroidism
[2] Scott-Moncrieff JC. Canine Hypothyroidism. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2007;37(4):709-722
[3] Mooney CT, Peterson ME. BSAVA Manual of Canine and Feline Endocrinology, 4th Edition