凍結手術は、マイナス196度の液体窒素で腫瘍細胞を凍結・破壊する治療法です。小さく浅い腫瘍や、高齢で麻酔の負担が心配なペットに特に適しています。

| 項目 | 凍結手術 | 外科切除 |
|---|---|---|
| 麻酔の範囲 | 局所・軽度の鎮静 | 全身麻酔 |
| 出血量 | 非常に少ない | 中~多い |
| 縫合の要否 | なし(かさぶたとして自然に脱落) | 必要 |
| 適用する腫瘍の大きさ | 小さく表在性の浅い病変(大きさ・適応は獣医師の判断) | 制限が少ない |
| 組織検査の活用 | 施術前に別途検査を推奨 | 切除した組織をすぐに検査 |
| 回復期間 | 1~2週(かさぶた脱落を基準;再色素沈着は数か月) | 2~4週 |
腫瘍の種類・位置によって獣医師の判断が変わります

施術前に必ず確認すべき点
凍結手術は「凍らせば終わり」ではありません。病変が良性か悪性か不明なまま凍結手術を行うと、凍結だけでは十分に治療できない悪性腫瘍を見逃し、再発を招く可能性があります。凍結手術は良性病変には治療的効果がある場合もありますが、悪性黒色腫や肥満細胞腫などでは通常、根治手段にはなりません。そのため、まず細針吸引細胞診(FNA)や生検で腫瘍の種類とグレードを確認し、その結果に基づいて適切な治療法を決定する必要があります。また、深さが不明な病変、血管や神経が多数通る部位、あるいは大きすぎるか深く浸潤しており十分な凍結範囲の確保が困難な腫瘍は、凍結手術の対象外となります。大きさによる適用可否は、獣医師が腫瘍の表在性・境界の明確さ・位置などを総合的に評価して直接判断します。

このような場合は、凍結手術が解決策ではありません。
肥満細胞腫、悪性黒色腫、軟部組織肉腫など、浸潤性や悪性度が高い腫瘍では、凍結手術のみでは十分な安全マージンを確保することが難しい場合があります。また、猫の口腔扁平上皮癌のように腫瘍の深さが予測できない場合も、凍結手術の単独治療は推奨されません。このようなケースでは、外科的切除と病理組織検査、必要に応じて抗がん剤治療や放射線治療を組み合わせたアプローチが標準的です。獣医師から「凍結手術の対象外です」と言われた際は、必ずその理由を尋ねてください。

タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
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[1] Fossum TW. Preoperative and intraoperative care of the surgical patient. In: Small Animal Surgery, 3rd ed. Elsevier; 2007.
[2] Withrow SJ, Vail DM, Page RL. Withrow and MacEwen's Small Animal Clinical Oncology, 5th ed. Elsevier; 2013.
[3] Small Animal Anesthesia and Pain Management: A Color Handbook, 3rd ed.