犬の慢性腎不全は不可逆的な腎臓疾患であり、IRISの1~4期によって症状や管理方法が異なります。早期発見と段階別の食事・水分管理により、平均寿命を延ばすことが可能です。

| 項目 | ステージ1 | ステージ2 | ステージ3 | ステージ4 |
|---|---|---|---|---|
| クレアチニン(mg/dL) | <1.4 | 1.4~2.8 | 2.9~5.0 | >5.0 |
| 窒素血症(老廃物の蓄積) | 非窒素血症 | 軽度 | 中等度 | 重度 |
| 主な症状 | ほとんどありません | 軽い多飲多尿 | 食欲不振・体重減少 | 嘔吐・無気力・尿毒症 |
| 管理の方向性 | 定期健診・水分管理 | 療法食の開始 | 薬物・食事療法の併用 | 入院・輸液による集中治療 |
IRISガイドライン(クレアチニン・SDMA基準)に基づく比較です。正確なステージは必ず獣医師の診断で決定します。

すぐに動物病院へ連れて行かなければならない緊急のサイン
次の症状のいずれかが見られた場合は、24時間以内に動物病院の救急外来を受診してください。慢性腎不全が急激に悪化する「急性増悪危機」の可能性があり、この時期に迅速な輸液治療を行うことが回復に大きく寄与します。該当する症状は以下の通りです。① 24時間以上続く嘔吐、② 餌や水の完全な拒否、③ 意識低下や発作、④ 呼吸困難、⑤ 正常体温より低い低体温、⑥ 尿量が急激に減少または停止した場合です。普段よりも体力が急激に低下したり、歯茎が蒼白になったりする場合も、迷わず病院へお越しください。


好発品種と年齢別の注意点
慢性腎不全はすべての犬種で発症する可能性がありますが、英国コッカースパニエル、ゴールデンレトリバー、イングリッシュフォックスハウンド、ブルテリア、シャーペイなど、先天性・遺伝性の腎疾患が報告されている犬種では特に注意が必要です。7歳以上のシニア犬は、症状がなくても1年に1回以上、SDMAを含む腎機能検査を受けることをお勧めします。犬で慢性腎不全が疑われる場合は、まず遺伝性の腎形成異常(renal dysplasia)の有無を確認する必要があります。また、普段からの体重管理や十分な水分補給などの生活習慣のケアも腎臓の健康維持に役立ちますので、併せて心がけてください。

タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
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[1] Notes on Canine Internal Medicine, 4th Edition — Chapter on Renal Disease and Azotemia
[2] Clinical Medicine of the Dog and Cat, 4th Edition — Chronic Kidney Disease
[3] Urinalysis in the Dog and Cat — Azotemic vs Nonazotemic CKD
[4] International Renal Interest Society (IRIS) Staging Guidelines, 2019 Revision