猫の線維肉腫は、皮膚や皮下結合組織から発生する悪性腫瘍です。発生部位や切除マージンの確保可否によって、治療選択肢と予後が大きく異なります。


この場合は、すぐに病院へお越しください。
直径が2cmを超えるしこり、3か月以上消えないしこり、ワクチン接種部位にできて1か月以上残っているしこりは、すべて「1・2・3のルール」に該当します。このような場合は、単なる観察ではなく、細針吸引細胞診や切開生検により早期に鑑別診断を行う必要があります。猫の皮膚線維肉腫(FISS)は、見かけは小さくてもすでに筋膜に沿って深く浸潤していることが多いため、注意が必要です。
| 項目 | 体幹(肩・脇腹) | 四肢末端 | 口腔・顔面 |
|---|---|---|---|
| 一次治療 | 広範囲(根治的)切除 — 側方5cm・筋膜2層または深部の骨まで | 広範囲切除、マージンの確保が難しければ断脚を検討 | 広範囲切除 ± 放射線 |
| 補助治療 | 微小残存時は放射線 ± ドキソルビシン併用 | マージン不足時は放射線 | マージン不足時は放射線 ± 抗がん剤 |
| 再発傾向 | 完全切除後でも約42%の再発が報告(Kobayashi 2002) | 根拠資料が限られる | 根拠資料が限られる |
| 生存データ | 根治切除群全体で約51%が生存、生存個体の追跡期間中央値は約600日(Romanelli 2008)— 『平均生存期間』とは異なります | 部位別の比較データが不足 | 部位別の比較データが不足 |
| 転移・病期 | 転移の可能性があり、胸部3方向のレントゲンなど病期検査をおすすめします | 局所リンパ節の吸引・全身の病期検査 | 局所浸潤が主体、画像評価が必要 |
Romanelli et al.(2008)、Phelps et al.(2011)、Kobayashi et al.(2002)の資料に基づいています。個体差が大きく、部位別の比較根拠が限られているため、数値は参考用です。

再発を防ぐための注意事項
繊維肉腫が一度発生した猫は、生涯にわたり同じ部位でのワクチン接種を避ける必要があります。その後のワクチン接種は、再発時に少なくとも片側の切断が可能となるよう、四肢の遠位部(手足の先側)に接種する「遠位四肢原則」に従います。また、マイクロチップやステロイドの徐放性注射などの慢性的な刺激要因も、同じ部位に繰り返さないことが望ましいです。経過観察は、少なくとも2年間にわたり3ヶ月ごとの間隔で推奨されます。

タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
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[1] Kudnig, S.T., Séguin, B., Veterinary Surgical Oncology, 2nd Edition, Wiley-Blackwell, 2022 — Chapter on Feline Injection-Site Sarcoma and Soft Tissue Sarcoma
[2] Phelps, H.A., et al., Radical excision with five-centimeter margins for treatment of feline injection-site sarcomas: 91 cases (1998–2002), JAVMA, 2011
[3] Romanelli, G., et al., Analysis of prognostic factors associated with injection-site sarcomas in cats: 57 cases (2001–2007), JAVMA, 2008
[4] Raskin, R.E., Meyer, D.J., Small Animal Cytologic Diagnosis: Canine and Feline Disease, 2nd Edition — Fibrosarcoma/Soft Tissue Sarcoma chapter