猫の前庭症候群は、内耳や脳幹の前庭系に異常が生じ、平衡感覚が突然失われる神経系の疾患です。特発性なのか中枢性なのかを迅速に区別することが、対応の鍵となります。


すぐに救急動物病院へ連れて行かなければならないサイン
以下の症状が一つでも当てはまる場合は、直ちに24時間対応の動物病院へお越しください。脳卒中や脳腫瘍などの中枢性疾患が疑われます。 • 発作(けいれん)を伴う場合 • 意識が不明瞭(鈍麻・昏迷・昏睡)で、反応がない場合 • 72時間経過しても症状が全く改善しない、または一時的に良くなった後に再発・悪化する場合 • 眼球振盪(眼球の震え)が上下方向である場合 • 両眼の視線が異なる方向を向いている場合(斜視・不均衡な眼球振盪)


高齢猫と再発の注意点
特発性前庭症候群は特定の年齢層に限定されるものではなく、どの年齢の猫でも発症する可能性があります。むしろ、教科書によっては若齢猫に多いと報告されていることもあります。予後は概ね良好ですが、特に高齢猫では腎不全、甲状腺機能亢進症、高血圧などの基礎疾患を併発しているケースが多いため、血液検査、甲状腺機能検査、血圧測定を含む全身検査を必ず併行することが安全です。症状が改善した後、再発したり、他の神経症状が追加で現れたりした場合は、中枢性の原因を再評価する必要があります。

タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
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[1] Little SE et al., The Cat: Clinical Medicine and Management, 2nd Edition, Chapter 52, Elsevier, 2012
[2] de Lahunta A, Glass E, Kent M. Veterinary Neuroanatomy and Clinical Neurology, 4th Edition, Elsevier Saunders, 2015
[3] Thomas WB. Vestibular Dysfunction. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2000;30(1):227-249