散歩中に愛犬の体からマダニを見つけた際、慌てず安全に除去する方法、絶対に避けるべき行為、そして除去後に観察すべき兆候まで、飼い主さんが知っておくべき緊急対応ガイドです。

| 項目 | やること | 注意ポイント |
|---|---|---|
| 第1段階 — 準備 | マダニ専用の除去器具・手袋・消毒薬・密閉容器を準備 | 素手は禁止、一般的なピンセットは頭部がちぎれる危険 |
| 第2段階 — 位置の確認 | 毛をかき分けてマダニの頭部が皮膚に刺さった位置を確認 | 犬が動かないように補助者を1人つけることを推奨 |
| 第3段階 — 除去 | 皮膚に最も近い部分(頭側)をつかんでゆっくりまっすぐ引き抜く | ねじったり引きちぎったりしない |
| 第4段階 — 消毒 | 咬まれた箇所を消毒し、マダニは密閉容器に保管 | 1〜2週間保管しておくと検査用に活用可能 |
| 第5段階 — 観察 | 発熱・食欲低下・元気消失などを24時間〜2週間観察 | 異常のサインがあればマダニと一緒に病院を受診 |
参考:BSAVA獣医皮膚科学の教科書、外部寄生虫の章で推奨される手順

絶対にやってはいけないマダニの駆除法
民間療法として知られる方法の多くは、むしろ危険です。ライターやマッチの火で焼く方法は、犬に火傷を負わせるだけでなく、マダニを刺激して病原体を含む唾液や体液が咬まれた部位に流入するリスクを高める可能性があります。アルコール、ワセリン、食用油で覆って窒息させる方法も、マダニをゆっくりと刺激するだけであり、教科書が推奨する「専用ツールやピンセットでゆっくりと真っ直ぐに引き抜く」方法ではありません。素手で引き抜く方法は、口器が皮膚に残り、炎症や膿瘍、二次感染を引き起こす可能性があります。爪で押しつぶすことも禁止されています。

このような場合は、すぐに病院へ連れて行ってあげてください。
マダニを除去したあと、頭部(口器)が皮膚に残っている場合や、咬まれた部位が次第に腫れて滲出液が出る場合は、自己処置を中止し、動物病院を受診してください。また、除去後数日から数週間(ライム病の場合は2ヶ月以上)の間に、発熱、倦怠感、食欲不振、黄疸、血尿などの症状が現れた場合は、バベシア症、ライム病、アナプラズマ症、エーリキア症、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)などのマダニ媒介疾患を疑う必要があります。アナプラズマ症やエーリキア症は通常感染から1〜3週間後、ライム病は2〜5ヶ月後に症状が現れることがあるため、観察期間を余裕を持って設けるのが望ましいです。保管しておいたマダニを一緒に持参すると、診断に大きく役立ちます。


タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
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[1] BSAVA Manual of Canine and Feline Dermatology, 4th Edition, Chapter on Ectoparasites
[2] Principles and Practices of Canine and Feline Clinical Parasitic Diseases, Chapter 7 & 13
[3] 수의피부과학 교과서 — 외부기생충 챕터