犬の脂肪腫は良性腫瘍としてよく見られますが、悪性の脂肪肉腫は命に関わる可能性のある悪性腫瘍です。飼い主さんが知っておくべき主な違いと対処法をまとめました。



すぐに病院を受診すべきサイン
脂肪腫が急速に大きくなる、あるいは皮膚が赤く腫れて潰瘍が生じた場合は、直ちに獣医師にご相談ください。これらは悪性の脂肪肉腫など、他の腫瘍の兆候である可能性があります。触診だけでは正確な診断が難しいため、中年以降の犬で新たにできたしこりについては、細針吸引細胞診(FNA)や組織検査で確認するのが安全です。
| 項目 | 脂肪腫 | 悪性脂肪肉腫 |
|---|---|---|
| 性質 | 良性 | 悪性 |
| 成長速度 | ゆっくり | 速い |
| 触感・固定の有無 | 柔らかく動く(被膜に包まれる) | 硬く固定・浸潤 |
| 転移の有無 | 転移しない | 根拠上の確認が難しい |
| 局所再発リスク | 低い(完全切除で完治) | 高い |
| 治療方法 | 経過観察または外科的切除 | 広範囲の外科的切除(±放射線治療) |
脂肪腫は被膜に包まれ転移しませんが、悪性脂肪肉腫は浸潤性に成長するため完全切除が難しく、再発リスクが高いです。確定診断は組織検査で行います。


注意:脂肪腫も継続的な観察が必要です
脂肪腫は良性であっても、大きくなると運動制限や不快感を引き起こす可能性があります。また、切除後にも同じ部位に再発したり、別の部位に新たな脂肪腫が現れたりすることもあります。脂肪腫が悪性に変化するという明確な根拠はありませんが、大きさや質感の変化を見逃さないよう、定期的に状態を観察することが重要です。

タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
シェア
[1] Veterinary Surgical Oncology, 2nd Ed. Elsevier Saunders, 2012.
[2] Clinical Medicine of the Dog and Cat, 4th Ed. Elsevier, 2018.
[3] Plumb's Veterinary Drug Handbook, 9th Ed. Wiley-Blackwell, 2021.