猫の心因性脱毛は、ストレスや不安によって毛を過度に舐めすぎることで引き起こされる行動性脱毛です。原因から診断・治療・環境改善まで、飼い主さんが最もよく質問される内容を獣医学的根拠に基づいてまとめました。

| 項目 | 医学的脱毛 | 心因性脱毛 |
|---|---|---|
| 主な原因 | アレルギー・寄生虫・真菌・ホルモン異常 | ストレス・不安・強迫行動 |
| 脱毛の対称性 | 原因によって異なります — アレルギー性は対称、一次性の毛包疾患はまだら・非対称 | 左右対称が多いですが、非対称としても現れます |
| 皮膚の病変 | 発赤・かさぶた・浸出液を伴うことが比較的多い | 比較的きれいですが、ひどく舐めると擦り傷・かさぶたができることがあります |
| かゆみの有無 | かゆみ(掻痒感)で舐めることが多い | 皮膚疾患によるかゆみはないか軽度 |
| 確定診断の方法 | 顕微鏡による被毛検査・皮膚掻爬・血液・アレルギー検査 | 医学的原因をすべて除外したうえで診断 |
脱毛の左右対称性だけでは医学的脱毛と心因性脱毛を区別できません。実際の鑑別診断は必ず獣医師に受けてください。

心因性の脱毛は「除外診断」です。自己診断はしないでください。
心因性脱毛は、他の医学的な原因をすべて除外した後に下す「除外診断」です。獣医学の教科書でも、アレルギー、寄生虫(デモデクス・ガトイや耳ダニなど)、皮膚感染症、そして高齢猫の甲状腺機能亢進症といった医学的な原因をまず確認して除外するよう強調しています。「ストレスのせいだろう」と決めつけてしまうと、本当の原因を見逃して治療が遅れる可能性があります。顕微鏡による毛髪検査で自己傷害の有無を確認し、皮膚スクレイピング、血液検査、アレルギー検査などで医学的な原因をまず除外する必要があります。


このような場合は、すぐに動物病院へお越しください。
脱毛部に発赤、滲出液、かさぶたが見られます。猫が2日以上ほとんど食べません。嘔吐や下痢も伴います。脱毛範囲が数日間で急激に広がりました。皮膚を激しく噛んで傷がついています。これらのうち1つでも該当する場合は、医学的な原因の可能性が高いです。すぐに動物病院を受診してください。

タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
シェア
[1] Waisglass SE, Landsberg GM, Yager JA, Hall JA. Underlying medical conditions in cats with presumptive psychogenic alopecia. J Am Vet Med Assoc. 2006;228(11):1705-9.
[2] Meredith A et al. BSAVA Manual of Canine and Feline Dermatology, 4th Ed. BSAVA Press, 2019.
[3] Overall KL. Clinical Behavioral Medicine for Small Animals. Mosby, 1997.