老犬の認知症(認知機能障害)の代表的な症状である夜間の鳴き声や方向感覚の喪失を、DISHAAチェックリストで確認する方法から、早期診断、薬物療法、食事療法、環境管理までをまとめました。


このような症状が見られた場合は、すぐに動物病院へお越しください。
一見、単なる認知症のように見えても、実は緊急事態である可能性があります。以下の兆候が見られた場合は、24時間以内に動物病院を受診してください。 - 突然の発作や意識消失 - 一方への旋回運動(サークリング)が止まらない - 片側への頭部傾斜(ヘッドチルト)が突然始まる - 24時間以上、水や餌を拒否する - 呼吸が荒く、歯茎の色が蒼白または青紫色に変化する 特に発作や旋回運動は、脳腫瘍や前庭症候群の可能性を示唆します。認知症と決めつけて様子を見ていると危険です。

| 項目 | 初期(軽症) | 中期(中等度) | 末期(重症) |
|---|---|---|---|
| 主な症状 | 睡眠周期が少し乱れる、たまにぼんやりした表情 | 夜間に吠えることが増える、排泄の失敗が始まる | 飼い主を認識できない、一日中方向感覚を失う |
| DISHAA評価 | 低い点数帯(軽い変化) | 中間の点数帯(複数の領域に症状を伴う) | 高い点数帯(ほとんどの領域が障害) |
| 推奨される対応 | 食事・環境の調整+定期健診 | セレギリン+抗酸化剤+食事 | 薬物+24時間の飼い主のケア+夜間の照明 |
| 予後 | 管理すれば進行を遅らせられる可能性 | 薬物・食事で症状を緩和 | 生活の質の維持を中心としたケア |
DISHAAは飼い主のアンケートに基づく評価ツールで、段階の区分は推定値であり、正確な点数と段階は獣医師の評価が必要です

夜間の吠え声への不適切な対応
夜間に吠える高齢犬を叱ったり、部屋に隔離したりすると、不安がさらに増して症状が悪化します。教科書でも、排泄の失敗や夜間の行動を理由に愛犬を絶対に叱ってはいけないと強調されています。以下の行為は避けてください。 - 大きな声で叱る(不安を引き起こす) - 暗い部屋に一人にする(方向感覚の喪失を悪化させる) - 就寝前に水や餌を急に断つ(脱水・低血糖のリスク) 代わりに、夜間の照明を弱く点け、飼い主の寝室の近くに寝床を移して安定感を与えるのが良いでしょう。夜間の吠え声が毎日繰り返され、次第に頻繁になってきた場合は、薬物療法について獣医師と真剣に相談する必要があります。

タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
シェア
[1] Nutrient Requirements of Dogs and Cats — Effects in Geriatric Nutrition (NRC)
[2] Applied Veterinary Clinical Nutrition, 2nd Ed — Senior Dog and Cat Nutrition
[3] Introduction to Animal Behavior and Veterinary Behavioral Medicine — Cognitive Decline in Senior Dogs
[4] Landsberg G. et al., Cognitive Dysfunction Syndrome: A Disease of Canine and Feline Brain Aging, Vet Clin North Am Small Anim Pract, 2012