猫の不安・攻撃性・強迫行動に用いられる行動修正薬物療法の種類、効果、注意点について、獣医学顧問団がQ&A形式でまとめました。

| 項目 | 主な適応 | 特徴 | 注意事項 |
|---|---|---|---|
| SSRI系 | 不安・尿マーキング(スプレー)・強迫行動 | 長期服用が可能、効果の発現まで最低4~6週 | 初期に食欲の変化・元気消失が起こることがある |
| 三環系抗うつ薬 | 強迫行動・尿マーキング(スプレー)・不安・猫同士の攻撃性 | SSRIと類似の効果、長期処方 | 肝・腎疾患や肥満の猫には推奨されず、頻脈・不整脈などの心臓の副作用に注意 |
| ベンゾジアゼピン系 | 急性の不安・恐怖の状況(移動・病院受診など) | 服用後1~2時間以内に比較的速やかに作用、必要時に短期使用 | 鎮静・運動失調が起こることがあり、まれに不安・攻撃性がかえって増すこともあるため、短期処方のみ推奨 |
| セロトニン拮抗・再取り込み阻害薬(SARI系) | 軽度の恐怖・不安、移動・病院受診 | 状況への備えとしても使える比較的新しい選択肢 | 鎮静が起こることがあり、MAO阻害薬との併用は禁止(セロトニン症候群のリスク) |
すべての薬は獣医師の処方・指導のもとでのみ使用します。薬の種類・用量は個々の猫の状態によって異なります。

絶対にやめてください。自己判断での投薬は危険です。
人間の抗不安薬や抗うつ薬を猫に勝手に与えると、深刻な副作用を引き起こす可能性があります。行動薬の多くは人間用として開発されており、猫に対しては承認外使用(オフラベル)となるため、慎重な判断が必要です。人間には安全な用量でも、猫にとっては致命的になることがあります。また、天然サプリメントと併用すると、セロトニン症候群のような危険な相互作用が生じる恐れもあります。インターネットで購入した薬や、飼い主が服用している薬は絶対に与えないでください。必ず獣医師の処方と指導のもとで使用してください。


薬物治療の前に必ず身体検査を受けてください。
行動問題のように見えても、実際には身体的な疾患が原因であるケースが少なくありません。甲状腺機能亢進症は過剰な興奮や攻撃性を引き起こすことがありますし、下部尿路疾患ではトイレ以外の場所で排泄するようになることがあります。痛みを感じている猫も攻撃性が高まる傾向があります。まずは血液検査や尿検査などの基本的な健診で身体的な疾患を除外することが重要です。

タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
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[2] Hart B.L., Cliff K.D., Tynes V.V., Bergman L., Control of urine marking by use of long-term treatment with fluoxetine or clomipramine in cats, J. Am. Vet. Med. Assoc., 2005, 219, pp.1557-1561
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[4] Ellis S.L.H., Introduction to Animal Behavior and Veterinary Behavioral Medicine, Chapter 17, Wiley-Blackwell, 2023