犬の抗がん治療中に現れうる副作用を正確に理解し、保護者が直ちに適切に対応できるよう、具体的な対処法をご案内します。



すぐに動物病院を受診する必要がある緊急のサイン
嘔吐や下痢が12時間以上続く場合、血便や重度のショック症状(失神、呼吸困難)、高熱(39.5度以上)が見られる場合は、直ちに病院にご連絡ください。特にMDR1(ABCB1)遺伝子変異を持つ犬種(例:コリー、シェットランド・シープドッグ、ロングヘアード・ウイペット)では、抗がん剤の排泄が減少して過敏反応を示す可能性があるため、副作用が強い場合は直ちに処置が必要です。


| 項目 | 軽症 | 中等度 | 重症 |
|---|---|---|---|
| 嘔吐 | 1〜2回、1日以内に回復 | 3回以上、12時間以上持続 | 反復的、重度の脱水 |
| 下痢 | 1〜2回、水のような便 | 3回以上、血便の可能性 | 持続的、血便、脱水 |
| 食欲不振 | おやつを拒否、1日絶食可能 | 食事拒否が続く、体重減少 | 全く食べない、栄養補給が必要 |
| 疲労感 | 昼寝が多い、活動性の低下 | 動かない、反応が鈍い | 失神、呼吸困難 |
重症の場合は直ちに病院を受診する必要があります。
MDR1遺伝子変異を持つ犬種は、抗がん剤治療に際して注意が必要です。
コリー、シェットランド・シープドッグ、ロングヘアード・ウイペットなど、コリー系品種はMDR1(ABCB1)遺伝子変異により、抗がん剤に対して過敏反応を示す可能性があります。これは、p-糖タンパク質ポンプによって排出されるドキソルビシンやビンカアルカロイドなどの薬物の排泄が減少し、体内の薬物濃度が高まることで毒性が増強されるためです。抗がん剤治療を受ける前には必ずMDR1遺伝子検査を受け、獣医師と相談して薬物の種類と用量を調整することが重要です。

タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
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[1] Small Animal Critical Care Medicine, 3rd Ed. 2015. Chapter 19: Chemotherapy Side Effects and Management.
[2] Vet Surgery Oncology, 2nd Ed. 2011. Maruo T. et al. Retrospective study of canine nasal tumor treated with hypofractionated radiotherapy.
[3] Plumb's Veterinary Drug Handbook, 9th Ed. 2021. ABCB1 (MDR1) gene mutations and drug sensitivity in dogs.