犬の膀胱腫瘍(移行上皮癌)は、血尿や頻尿が繰り返される悪性腫瘍であり、早期発見が予後を左右します。リスク品種、症状チェックリスト、診断と治療の段階、家庭でのケアのポイントなど、飼い主さんが必ず知っておくべき重要な情報をまとめました。


このような兆候が見られた場合は、すぐに救急病院へ連れて行ってください。
血尿が24時間以上続いたり、尿が一滴も出なかったり、お腹が張ってぐったりしている場合は緊急事態です。腫瘍が尿道を塞いで尿路閉塞が進むと、腎臓の障害が急速に進行し、24~48時間以内に命の危険にさらされる可能性があります。初めて受診する動物病院の場合、以前の尿検査結果と抗生物質の処方記録を持参すると、診断がはるかにスムーズになります。

| 項目 | 手術 | 抗がん剤 | 消炎剤のみ | 放射線 |
|---|---|---|---|---|
| 適用時期 | 早期・局所の腫瘍 | 転移・再発 | 手術・抗がんの補助 | 手術不可の場合 |
| 期待される生存期間 | 単独で約3〜4か月(報告) | 併用時に約1年前後(報告) | データが限られ・症状緩和が中心 | データが限られる |
| 痛みの緩和 | True | True | True | True |
| 腎臓の負担 | 低い | 中程度 | 低い | 低い |
生存期間は報告ごとにばらつきが大きく、データも限られています。腫瘍減量手術のみの場合、報告された生存期間の中央値は約3〜4か月程度で、手術・抗がん・消炎剤を併用すると1年前後まで報告された症例があります。腫瘍の位置・転移の有無・治療への反応性によって大きく異なるため、参考程度にご覧ください。

この犬種は定期的な健康診断が必須です。
一部の犬種は、他の犬種と比較して膀胱腫瘍(移行上皮癌)の発症リスクが高いことが知られています。シェットランド・シープドッグで移行上皮癌が診断された症例が報告されており、スコティッシュ・テリアをはじめとするテリア系やビーグルなども、よく見られる高頻度犬種として挙げられます。ただし、「何倍も危険である」といった具体的な数値は資料によって大きく異なるため、参考程度にご覧いただくのが良いでしょう。これらの犬種は高齢期に入ると、定期的に尿検査と腹部超音波検査で健康状態をチェックし、普段と異なる排尿の兆候が見られたらすぐに診察を受けることが安全です。また、不要な化学物質への接触を減らすことも、予防に役立つ可能性があります。

タイのコンケン大学で獣医学を専攻した獣医師で、米国ノースカロライナ州立大学のIVSAプログラムを修了しました。動物病院での臨床経験をもとにペットヘルスケア分野で活動しており、飼い主と獣医師をつなぐデジタル診療環境の構築に取り組んでいます。
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[1] Vail DM, Thamm DH, Liptak JM. Withrow and MacEwen's Small Animal Clinical Oncology, 6th Ed. Elsevier, 2019. Chapter on Tumors of the Urinary System.
[2] Kudnig ST, Séguin B. Veterinary Surgical Oncology, 2nd Ed. Wiley-Blackwell, 2022. Chapter 11: Urinary Tract.
[3] Lane IF, Schaer M. Notes on Canine Internal Medicine, 4th Ed. Wiley-Blackwell, 2014. Section on Urothelial Carcinoma.
[4] Knapp DW, et al. Naturally-Occurring Invasive Urothelial Carcinoma in Dogs, a Unique Model to Drive Advances in Managing Muscle Invasive Bladder Cancer in Humans. Frontiers in Oncology, 2019.